国際離婚と行政手続き――行政書士が解説する届出・在留資格の注意点


国際離婚と行政手続き――行政書士が解説する届出・在留資格の注意点
近年、日本人と外国人との国際結婚が増加する一方で、国際離婚の件数も増えています。離婚そのものの法的手続きに加え、国際離婚では「届出」や「在留資格」に関する注意点があり、外国人配偶者の日本での生活に大きな影響を与えることがあります。本記事では、国際離婚に関する基礎知識を行政書士目線で整理します。
離婚の方法と届出
日本での離婚には、以下の方法があります。
- 協議離婚(民法763条)
夫婦間で合意し、市区町村役場に離婚届を提出する方法。最も多いケースです。 - 調停離婚(家事事件手続法)
家庭裁判所での調停により合意に至る場合。 - 裁判離婚(民法770条)
浮気やDVなど法律上の理由がある場合、裁判で離婚が認められる方法です。
国際離婚の場合、外国人配偶者の国の法律が関わることもあり、「日本の役所での離婚届」だけでは不十分なケースもあります。外国人の本国にも離婚の届出が必要となる場合があるため、相手国大使館・領事館での確認が不可欠です。
在留資格に関する注意点
外国人が「日本人の配偶者等」の在留資格で在留している場合、離婚によってその資格を維持できなくなる可能性があります。
- 在留資格の喪失
日本人の配偶者等の在留資格は、離婚や死別で婚姻関係が終了した場合、引き続きの滞在理由がなければ在留継続が難しくなります。出入国在留管理庁へ「在留資格変更許可申請」が必要です。 - 変更可能な在留資格の例
- 定住者:日本に長期間住んでいる場合や、日本人との間に子どもがいる場合に認められる可能性があります。
- 就労系在留資格:技術・人文知識・国際業務などの在留資格に切り替えることで、日本で働きながら滞在を継続できる場合があります。
- 届出義務(入管法第19条の16)
離婚や配偶者の死亡から14日以内に入管へ「配偶者に関する届出」を提出しなければなりません。怠ると不利益を受ける可能性があります。
実務上の注意点
- 相手国の法制度の確認:二重国籍の子どもがいる場合、親権や養育費に関して国ごとの法律が異なるため、専門家への相談が必要です。
- 離婚後の生活基盤の確保:住居、仕事、子どもの教育など、在留資格の見通しと並行して生活再建の準備が求められます。
- 専門家の関与:離婚届だけでなく、在留資格変更や本国届出など複雑な手続きを伴うため、行政書士・弁護士など専門家のサポートを受けることが望ましいです。
まとめ
国際離婚は、単に婚姻関係を解消するだけでなく、外国人配偶者の在留資格や子どもの国籍・親権問題など、多方面に影響を及ぼします。行政書士としては、離婚届や入管への届出を適正に行うとともに、外国人本人が安心して日本での生活を続けられるよう、法令に基づいた在留資格の変更や生活支援のサポートを提供することが重要です。
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